「お詫びに、今日一日付き合ってくれませんか?」

「付き合う……?」

「ええ。僕が用意した服を着て、一緒に王都へ行ってほしいのです」

 耳もとでささやくたびに、ピケの体が震える。
 時折堪えきれない笑い声が漏れるから、おそらくくすぐったいのだろう。
 女性らしい体つきになってきたといっても、まだまだお子ちゃま。色っぽくささやいてもこれなのだから、彼女をその気にさせるのはなかなかに難しい。

 ノージーはピケから体を離すと、用意してきた服と靴を手渡した。

「この前の休日に、王都で買ってきたのですよ」

「これ、を……?」

 ピケは渡されたものを大事そうに抱えながら、目をぱちくりとさせた。
 その目がわずかにやすらいだような気がしたのは、錯覚だろうか。

 イネスが言うには、ピケはノージーが王都で誰かとデートしているかもしれないと思っていたらしい。
 それが本当ならば、そのやすらぎは嫉妬からくるものに違いない。

 ピケは僕が誰かのものになったら、嬉しくない?
 そうだったらうれしいのに、とノージーはこっそり思った。