どうしよう。
 ピケはぎこちない笑みを浮かべながら、どう断ろうかと頭を巡らせた。
 彼女の中で、王女の申し出はお断りの一択しかない。

 そもそもノージーは、ピケを幸せにするためになにをしようとしているのだろう。
 王女の話を聞くに、彼はピケを王女の侍女に推薦したらしいが、大きなお世話としか言いようがない。

 ピケは、貧しい粉挽き屋の娘だ。王女の侍女なんていう大役を務められる身分じゃないし、どう足掻いたって就けるはずがない職業である。
 それだけでなく、ピケは侍女の仕事についてもよくわかっていなかった。

(侍女っていうくらいだから、王女のそばで侍るのが仕事なわけでしょう? ノージーみたいな綺麗な容姿ならわかるとしても、私みたいな子は引き立て役にすらならないんじゃないかしら)

 むしろ、存在が認知されるかも怪しい。
 存在感を究極まで消して、いざという時の盾になる──ならわからなくもないが。

(いやいやいや。それのどこが幸せだっていうの? 綺麗な格好して、すてきなお城でお姫様にお仕えできるのは夢みたいな話だけれど、私は王女様のために身を挺するほど彼女のことを大事だと思えていないもの。彼女のために死ぬなんて、絶対無理!)