けれど、赤面なんて意思の力でどうにかなるものではない。
 どうにかしなくちゃと焦るあまりなのか、今度は心臓がポコポコ跳ね出す。
 とうとうピケは、どうにもならないと匙を投げた。

(無理。無理です。こんな美女に言い寄られて、落ち着いていられるはずがないでしょぉぉぉぉ!)

 ノージーいわく、今の彼の姿はピケの理想をかき集めた姿なのだ。
 つまり、こうなってしまうのは必然というやつで、ピケがおかしいわけじゃない。はず。

 耐えきれなくなってコクコクと頷くピケに、ノージーが嬉しそうに破顔した。

「ありがとうございます」

 美女の微笑みにこれほどまでの破壊力があるとは。
 生まれて初めて見た絶世の美女に、ピケの意識はグラグラである。

(総員撤退! 退けぇ、退けぇぇぇ!)

 混乱の極みに達した彼女の頭の中では撤退命令が出され、ありもしない大群がザザーっと逃げていく。

『わぁぁ、逃げろー!』

『ああ! ピケAが転んだぞ!』

『行け、B! 私の屍を越えていけぇぇ!』

 そんな妄想を脳内で繰り広げながらピケができたことといえば、大事な串焼きを落とさないように握りしめることだけだった。