主人には悪いが、彼が死んでくれて良かったとさえ思っている。
 そうでなければ、ピケは今もあの家に縛られていたはずだ。
 そして──これはとても考えたくないことだけれど──ピケは兄たちのものにされていたに違いない。

 日に日に女性らしい丸みを帯びた体つきになっていくピケに向けられた、兄とは思えない気味が悪い視線。ある夜に聞いてしまった、彼らの密談……。
 ノージーは一生誰にも話すつもりはないけれど、継母と義兄たちは、彼女をこの家から出すつもりなんてないようだった。
 父親が亡くなったらすぐに義兄のどちらかと結婚させて、死ぬまでこき使う。それが、彼らの計画だったのだ。

 手遅れにならなくて良かった、と心底思う。
 あのままだったら、主人の死よりも前に兄たちの手がピケに伸びていた。
 彼女は家族を大切にする子だから、たとえそれが無理やりであったとしても、なんとか大切にしようと努力してしまう。

 愚かだと思う。
 だからこそ、好ましく思ってもいるのだけれど。