この家へ引っ越してきた日に迷い込んできた子猫は、まるでノージーの子どもの頃みたいだった。
 母猫とはぐれ、おなかを空かせてクッタリとしている姿は、ピケの保護欲を掻き立てる。
 ノージー曰く彼はただの猫で魔獣ではないらしいが、あまりにも似すぎていてピケは放っておけなかった。

 最初は子猫にピケを取られたようでムッとしていたノージーも、子猫が無邪気に「あそんで」と絡んでくるから、次第にかわいがるようになっていった。
 今ではすっかり、家族である。

(猫は愛情深い生き物だから)

 いずれ子どもができたらこんな感じになるのだろうか。
 幸せに満ちた未来しか想像できない。

(……なんて、能天気すぎかしら)

 じゃれ合う一人と一匹を微笑ましく思いながら、ピケはベッドを降りた。