あり得ないことを言われて、ピケは「はぁ⁈」と怒ったように叫んだ。
 しかし、獣人の姿でもやぶさかではないと言っている以上、ノージーが不安がるのも無理はない。
 ピケは呆れたようにため息を吐き、子どもへ言い聞かせるように「あのね」と言った。

「どんなノージーだって好きだと、自信を持って断言するわ。だから安心して見せなさい!」

 しがみついているノージーを引き剥がそうと、ピケは腕を突っ張る。
 その時、ボソリと声がした。

「その言葉、忘れないでくださいね?」

 ささやかれた声は甘く、覚えてはいけない禁断の味がしそうだった。
 ピケの手が緩んだ一瞬の隙をついて、ノージーは彼女を抱き上げる。

 大好きな人のぬくもりに包まれて、ピケはもう何も言わなくていっか、と思った。
 幸せ過ぎて胸がいっぱいで、この気持ちをほんのちょっぴりでも取りこぼしたくないから。

「ピケ、愛しています。絶対に、幸せにしますから」

 蕩けるような笑みを浮かべて愛を告げる大好きな人に、ピケは幸せを噛み締める。
 もう幸せなのに。
 ピケの答えは、甘いキスに溶けていった。