絶対に出会いたくないナンバーワンの、子育て中の母熊よりもおそろしい、荒れ狂うような感情。
 甘くとろけるような気持ちが恋だと思っていたピケは、思っていたものと違いすぎて、その凶暴さに戸惑いを隠せない。

「ピケは僕と、どうなりたいですか?」

「どう、なりたいか……?」

 ノージーの質問に、ピケはぼんやりと答える。
 彼はピケへヒントを与えるように、こう言った。

「僕はどんなピケも好きですが……僕の前で安心しきった顔をしているあなたが特に好きです。僕が胸に顔を押し付けていた時、すごくドキドキしてしましたね。僕のことを意識してくれているのだと思うと、すごくすごく嬉しかった。だけど、それではまだ足りないのです」

 ドキドキするだけではない、深い安らぎを得るような関係になりたいのだと、ノージーは言った。
 ピケもそうなりたいと思った。だけど──、

「私は……ノージーの、やわらかく笑う顔が好き。恥ずかしいけれど、甘やかすみたいに名前を呼んでくれる声が好き。私さえ忘れていたような約束を大切に覚えてくれているところが好き。ぜんぶぜんぶ、大好きよ。でも、どうしたらいいの? だって、ノージーは私の気持ちを知っていて、それなのに獣人の姿のまま。私としてはその姿も大好きだけれど、そうはいかないのでしょう?」