男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

「ううん、いいの。聞こえてしまったのなら、仕方がないわ。それに……本当の、ことだし」

 動揺しながらも、ピケは震える声で答えた。
 仏頂面になってしまうのも、声が震えてしまうのも見逃してほしい。
 今はとにかく冷静になりたくて、ピケはノージーから目を逸らした。

 金のスプーンに、ノージーの獣耳が映り込んでいるのが見える。
 その瞬間、ふと疑問が湧いた。

(どうしてノージーは獣人のままなのかしら?)

 ノージーはピケの気持ちを知っているのに、獣人のままだ。
 告白して気持ちが通じ合ったら、物語のようなファンタスティックなことが起こって人になるのだと思っていたのに。

(どうしてノージーは変わっていないの?)

 不安がるピケに気付いていないのか、ノージーは語り続ける。
 口を挟む雰囲気でもなくて、ピケは質問の言葉を飲み込んだ。