真剣な顔をして頷きながら聞くピケは、控えめに言ってかわいい。無防備すぎて、庇護欲が刺激される。
 ノージーは心の中でもだえながら、なんとか顔面崩壊を耐えた。
 だって、ここからが大事なのだ。ヘマをしたら、格好がつかない。
 ピケから美女だと褒めてもらった顔をキリリと引き締めて、ノージーは話した。

「魔獣が人族に恋をすると、恋した相手に好かれるために人化……つまり、獣の耳や尻尾を持つ獣人へ変化します。植物が虫を引き寄せるために綺麗な花を咲かせるのと同じようなものですね。植物の場合、その結果が種になるわけですが……僕らの場合、恋が成就すれば獣人の特徴がなくなり、人族と同じ見た目になります」

「ふむふむ……」

「とはいえ、まったく人族と同じかと言えば語弊がありますね。なにせ僕ら獣人や元獣人は魔獣時代の力をそのまま継承するので、人よりも遥かに強いのですよ。さて、ピケ……ここまで、ついてこられていますか?」

「なんとか?」

「疑問形なのが怪しいですが……端的にわかりやすく言えば、僕はピケに恋をしたのでこのような姿になった、ということです。恋した魔獣の姿は、恋した相手の理想をかき集めた姿を取るらしいので……ピケいわく美女だというこの姿は、きみ好みの姿だということなのでしょう」

「な、なるほど……? つまり、ノージーが美女になったのは私のせいで、獣人になったのはノージーのせい……ってことで合っている?」

「そうですね、おおむねそれで合っています」

 ノージーのお墨付きをもらって、ピケは安堵(あんど)の息を吐いた。