「総司令官様はけがしていませんか?」

「ああ、まったく問題ない」

 総司令官様をぶん投げたとあっては、どんな処罰を受けることになるのやら。
 そうなった原因は間違いなく自分にあるから、その時は一緒に罰を受けようとピケは決意する。
 ひそかに決意を固めるピケをよそに、アドリアーナはそれまでの気安い態度を改め、総司令官らしい厳しい顔つきでノージーを見た。

「ところで……ノージー、首尾は?」

「上々です。ガルニール卿とその手の内の者は全て捕らえ、今頃は総司令部の面々が後処理をしているかと」

 ガルニール卿。
 その名前に、ピケの体が過剰に反応する。
 空を飛んでいるようなふわふわとした気持ちから、一気に突き落とされたような気分になった。
 ブルリと震えた体を、ノージーがギュッと抱きしめてくる。ピケはすがるように、彼の背中にしがみついた。

「なるほど。では私も合流しないと怒られるだろうな」

「そう思うなら、さっさと行ったらどうですか? いつまでここにいるつもりなのです。気が利きませんね」