ピケが総司令官と高級カフェへ入店した頃、王城では静かに事が運ばれようとしていた。

「あなたは獣人だから万が一もないでしょうけれど……ピケのためにも、傷一つ作ってきては駄目よ」

 不安いっぱいの顔をしたイネスの背中を、キリルが大事そうに抱えている。
 いつもならばくっついた途端に甘い空気を散布しだす二人も、この時ばかりは弁えているようだった。

「わかっています。キリル様、イネス様をよろしくお願いいたします」

「ああ、任せろ」

 腰にはいた剣をポンとたたいたキリルに頷きを返し、ノージーは部屋を後にする。
 冷静そうに見えるが、彼は静かに怒っていた。