男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

「ノージーだけは、助けなくちゃ」

 これだけは譲れないと、ピケは盲信するようにつぶやく。
 残念なことに、ピケはイネスをノージー以上に大切だと思えなかった。
 あれほど良くしてもらったのに一番に思えない自分は、なんて恩知らずなのだろう。
 悲劇のヒロインみたいに自分を責めたけど、それでも気持ちは変わらない。

 答えなんてとうに出ているも同然なのだ。
 なのに優柔不断なピケの頭は、キリルと見つめ合うイネスの幸せそうな顔や、ピケを着飾って子どもみたいに無邪気な顔で笑うイネスの姿を突きつけてくる。
 そして決断を迫るように、ピケのそばでくったりとリラックスするノージーの顔や、不意に見せる男っぽい一面も突きつけるのだ。

「ノージー……」

 助けを求めて、ピケは名前を呼ぶ。
 タイミング良く来るわけがないのに。

 小さくため息を吐き、ピケは枕を胸に抱いた。
 涙がにじむ枕は、ひんやりとしている。
 無性に、ノージーの尻尾が恋しくなった。
 モフモフであったかい、香ばしいポップコーンみたいな匂いのする尻尾。

「今抱きしめることができたなら、迷わず決断できるのに」