男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

「ねぇ、ネッケローブさん。あれで理解できているのでしょう? 知らないふりなんて無駄だから、やめてもらえませんか? キーキー喚かれると私……うっかり手が滑って殺してしまいそう」

 チラリと後ろを見れば、メイドの手にはナイフが握られていた。
 カチンカチンと音を立てながら、折り畳み式のナイフを開閉している。
 明らかに手慣れた様子だ。だって彼女は手元を見てもいない。視線はまっすぐ、ピケを捉えたままなのだ。

 ピケは、このメイドは普通じゃない、と思った。
 あの夜にらみ合った侵入者よりも、いや、比較になんてならないくらいの実力を持っている。もしかしたら総司令官だって敵わないかもしれない。

「か、かかか勝手に殺した分は払わないからな!」

 怯えながらも言い返すガルニールは、一応枢機卿らしかった。
 威厳はなかったが、まぁまぁ自尊心は持っているらしい。

「ケチくさいですねぇ。厄介者を排除してあげるんだから、有料に決まっているでしょう?」

「こいつには使い道があるのだ。勝手に殺されては困る」

「無料奉仕はしない主義なので、ここはおとなしくしておいてあげますね」