「おい、おまえ。事情を説明していないのか?」

 ガルニールの視線が、ピケを通り越して扉の前に立つメイドへ向けられる。
 鼻に皺を寄せて忌々しそうに睨まれても、メイドは静かにたたずんだままだ。

「一応はしましたよ。周りの目もありましたし、事細かにはしていませんけど」

 メイドはガルニールの手下だったらしい。
 しかし完全に支配されている立場ではないようで、彼の言葉に疲れたと言わんばかりに重いため息を吐いた。

「はぁ、やれやれ。わがまま坊ちゃんはこれだから面倒なのよ」

「それは私のことを言っているのか⁉︎」

 心底つまらなそうにしているメイドに、ガルニールが音を立てて椅子から立ち上がる。
 そんな彼に引いたのか、メイドは面倒そうに顔を背けた。

「ええそうですよ、ガルニール卿。あなたのことを言っています。それと……」

 メイドの視線が、ピケの後頭部に突き刺さる。
 ピリピリと感じるのは、明確な殺意だ。ピケは殺されるかもしれない、と思った。