扉の前にはメイド。
 窓の前にはガルニール卿。
 逃げ道は、どこにもない。

(こういうの、八方塞がりって言うんだっけ? 八方もないけど)

 うまいこと考えたなぁ、なんて現実逃避にしょうもないことを考えていたピケは、ガルニールの咳払いにビクンと体を竦ませた。

「白い肌に、緑色の目。それに茶褐色の髪。それでどうして、アルチュールの者だと思わせることができるのか。私にはさっぱり、理解ができない」

 苛立っているのか、ガルニールは人差し指で机を叩き続けている。
 一定のリズムで発せられるコツコツという音は、見た目通りに神経質そうな彼らしい。
 緊張で嫌な音を立てている胸が同調しそうだ。かすかな音でさえガルニールの不興を買いそうで、ピケは本能的に息を潜めた。

「そう思わないか? ピケ・ネッケローブ」

 ガルニールが使っている客室で、ピケは椅子へ座らされている。
 向かいでは、立派な机に頬づえをついたガルニールが、品定めするようにピケを見ていた。