殊勝な態度で答えるピケに、メイドは目を細める。
 その目が悪賢い鴉の目と重なって見えて、ピケは引っ掛かりを覚えた。
 かわいらしい顔で微笑みを浮かべている彼女は、ちっとも鴉と似ていない。
 似ている点を挙げるとすれば茶色の虹彩だが、別段珍しい色でもない。
 どうしてそんなことを考えたのだろうと、ピケは不思議に思った。

「ええ、ぜひそうしてください。気を抜いているところに刺客が現れてグッサリ、なんてことにならないように」

 まだあどけなさが残るメイドの口から出たとは思えない物騒な言葉に、ピケの頰が引き攣る。気のせいではないのだろうかと、違和感を抱いた。

「ぐっさり……」

「はい、グッサリです」

 呆然(ぼうぜん)とつぶやくピケに、メイドはケロリと言ってみせる。
 容易く言えるのは、彼女がロスティの人間だからなのだろうか。
 強さこそ正義と言えるこの国ならではの感性なのかもしれない、とピケは思った。