フワフワの尻尾から香る、ポップコーンみたいな良い匂い。着痩せするのか、予想していたよりもしっかりとした体。
 それらに包まれてスヨスヨと眠っていた自分を思い出し、恥ずかしいやら、信じられないやら。
 ぽっぽと火照る頰を、ピケは宥めるように両手で包んだ。

「こんなことを考えてしまうのは疲れているせい。きっと、そう……そうにちがいない……そう、思いたい……」

 ガルニールが事を起こすのは今日か、それとも明日か。毎日気を張り続けているピケは、いい加減我慢の限界である。
 ここ最近、「嫌な予感がするのです」と言ってノージーがべったりと張り付いてくるので、余計にピリピリしていた。

 ピケがノージーの存在に神経を尖らせてしまうのには、理由がある。
 ガルニールが城へ来てからというもの、ピケの体は本人の意思にかかわらずノージーのそばにいたがるのだ。気付くとノージーの姿を探して動いている。

 そんな彼女を見たイネスは「まるで親ガモにくっついて歩く子ガモみたいねぇ」とほっこりしていたが、ピケは納得がいかなかった。