なんにせよ、超弩級の愛である。
 果たしてイネスの反応はいかに……と見てみると、お似合いというかなんと言うか、感動に打ち震えている主人がそこにいた。

「キリル様……いいえ、キーラ様。わたくしは確かに傷付きましたけれど、実は少しだけ嬉しく思ってしまったのです。だって、初めての嫉妬ですわよ? それに、わたくしを問い詰めるときのお顔。いつもの穏やかな顔とは違った凛々しい顔立ちに、わたくしは改めて恋をしました」

「イネス……!」

「キーラ様っ!」

 ひっしと抱き合う二人に、ピケは「終わりよければすべてよし!」とうんうん頷いた。
 だが、安心したのもつかの間。
 キリルとイネスがピケたちの存在を忘れて甘い言葉を交わし始めると、場の空気が桃色に染まりだす。
 いたたまれなさにピケが視線を泳がせていると、不意にイネスと視線が合った。

『あなたも、やるのよ』

 無言の圧力に、ピケは慌てて首を振って否定したが、耳を覆いたくなるようなキリルの甘い言葉の数々に意思が揺らぐ。
 タイミングが良いのか悪いのか、こんな時に限って王都の路地裏で受けたノージーの告白を思い出し、場の空気も相まって、やらなくちゃいけないような気がしてきた。