アドリアンの言葉に、ジョシュアと呼ばれた男は目を剥いた。
 それからピケのことをしげしげと見下ろして、ハッとなる。

「すまねぇ、小さいからてっきり……悪かったな、お嬢さん」

 ごまかすようにニカッと笑う顔は、子どもみたいに屈託がない。
 彼は、一見すると怖さしか感じないが、よく見てみれば整った顔つきをしている。
 まとう雰囲気が厳ついので萎縮してしまうが、所作は驚くほど紳士的だった。

 ちゃんと見れば、わかる。彼はいい人だ。怯える必要はない。
 そう思ったピケは、やっぱりきちんと礼を言おうと思い直して、口を開いた。

「……あの、助けてくださって、ありがとうございます」

「いや、いいってことよ。それに……長く友人をやっているが、あんなおもしろいもんは初めて見た」

 そういえば彼は、さっきもそう言っていた。
 この場におもしろいものなんてあったっけ? と不思議そうな顔をするピケに、ジョシュアがクイっと顎をしゃくってみせる。