震えが止まらない。
 狩りをする時特有の、血が沸騰するような感覚を、魔獣ではなく人を相手に感じてしまったことに対し、ピケは今更ながらに恐怖を覚えた。

「よしよし。ピケ、偉かったですね。一人でよく頑張りました」

「ノォジィィィィ」

「もう大丈夫です。僕がそばにいます」

 ノージーが撫でてくれるところが、少しずつ温かくなってくる。
 興奮して上がった息も、彼のゆったりとした胸の鼓動を聞いているうちに落ち着いてきた。

 そうこうしているうちに、遠くから大勢の足音が聞こえてくる。
 また敵かと体を竦ませるピケに、ノージーは「大丈夫」とささやいた。

「警備兵がこちらへ向かってきているだけです」

「警備兵?」

「ええ。そこで寝ているお客様を、引き取ってもらいましょう」

 どうやら、ピケの大立ち回りの音は、外まで聞こえていたらしい。
 ガヤガヤと物騒な声が近づいてくる。

「事情聴取なんて面倒なので、逃げてしまいましょう」

「え? ちょっと、ノージー⁉︎」

 清々しい笑みを浮かべたノージーが、ひょいとピケを抱き上げる。
 見た目からは想像できない安定の良さに、ピケは思わず「おお」と歓声を上げた。
 そうして、警備兵たちが慌てた様子で駆けつけるよりも前に、ピケはノージーの部屋へ連れ込まれたのだった。