「そ、そうだったのか……!」

 イネスの自信に満ちた発言に、ピケはピシャーンと雷に打たれ天啓を受けたような、驚いた顔をした。

「そうなのです! きっとノージーなら喜んで協力してくれるでしょう!」

 さすが、【アルチュールの天使】様である。
 ピケはイネスに、心からの賛辞をこめて拍手した。

 なるほど、と表情を明るくする彼女に心が痛む。
 でも、どうしてもイネスは、恋人たちの甘い時間を味わってみたかった。

 それにだ。
 なにもこれは、イネスだけが得をするわけではない。
 ノージーにとっても、良いチャンスになるに違いない。

 恋愛経験など皆無に等しいイネスは、浅はかにもそう思ったのだった。