ピケとデートさせるためにノージーへ特別休暇を与えるようになってから数週間。
 初めてデートをした翌日は、今までになく二人の距離が近づいているように見受けられたのでその後も続けていたのだが、見間違いだったのだろうか。

 おかしいわ、とイネスは思う。
 もともと二人は、出会った当初から、不具合でも起こしているのではと心配になるくらい距離感が近すぎたが、ここ最近はそれが自然だと思えるくらい違和感がなくなっていた。

 近くで見ていたから、イネスは知っている。
 デートの回数を重ねて少しずつ、ノージーは加減を覚え、ピケは受け入れるようになっていったことを。

 イネスの目には、二人の仲は順調に良い方向へ成長していっているように見えていた。
 ノージーの一方通行だった気持ちをピケが受け取るようになった、とでも言おうか。
 まだ返せるだけの気持ちは育っていないようだが、受け取るようになっただけでも大進歩だ。
 だから、特別休暇を許可したのは正解でしたわ、とイネスは思っていたのに。

「これでは困りますわ」

 チャイを淹れながら、イネスはピケに聞こえないよう小さくため息を吐いた。

 ピケとノージーには、これからもっともっと見せつけてもらわないと困る。
 イネスは彼らに、期待しているのだ。
 彼らが恋人っぽく触れ合えば触れ合うほど、キリルの鉄壁の理性にほころびが生じるから。