ぷつんと唇が切れて、口の中に鉄サビの味が滲む。
 強く噛みすぎて、唇が切れてしまったようだ。
 それくらいで唇が切れてしまうくらい、軟弱な自分が嫌になる。
 我慢できずに泣きそうになっていたら、ノージーが動いた。

「ピケ」

「んっ」

 ノージーの手が伸びてきて、ピケの顎を掬う。

(今、顔を上げたら……私絶対、ブスだもの……!)

 首を振って逃げようとしたら、思いのほか強い力で顔を上げられた。
 視線が絡むより数秒早くピケの涙に気がついたノージーが、険しい表情を浮かべる。
 ピケの目の前で、こわいくらいの真顔で目に苛立ちを浮かべたノージーが、チッと舌打ちした。

「血が、滲んでいますね」