「うわぁ。いかにもイモって感じ。早く田舎へお帰りくださ〜い」

 心ない言葉を耳にして、浮き足立っていた気持ちがサーッと冷めていくのを感じる。
 ピケが足を止めて振り返ると、二人の女性が冷笑を浮かべて彼女を見ていた。
 クスクス、クスクス。
 それはもう意地悪そうな顔で楽しそうに、彼女たちは(わら)っている。

「かわいい服着ていてもさぁ、中身がイモじゃあ服がかわいそうよね」

「そうそう。イモはイモらしく泥臭い服を着ていれば良いのに」

 明らかにピケを下に見て、馬鹿にしている様子だ。
 そういう彼女たちはといえば、ロスティの女性らしい鍛えられた体つきをしており、なおかつ胸もお尻もやわらかそうな曲線を描いている。着ている服はもちろん王都で流行しているワンピースで、化粧もバッチリ。

 だからピケは、言い返すことができなかった。
 侍女になって幾分か丸みを帯びたとはいっても、ピケの体は彼女たちほど豊かではない。
 顔つきだって、十六歳には思えないくらい子どもじみていたし、着ている服はノージーからのプレゼントで、ピケのセンスで選んだものじゃなかった。