「好きだよ、あすか」
わざと再び耳元で囁かれた言葉。
ずっと聞きたかった決定的な翔さんの気持ち。
「ごめん。そんな泣くほど勘違いさせるくらいなら、もっと早く言うべきだった」
「私は、翔さんとちがって経験値ないんですから。言ってくれないと、わかりません」
「ん、悪かった」
拗ねたように口を開いた私に、笑いながらも謝罪の言葉を告げる翔さん。
抱き締めながら子供をあやすように髪を撫でられる。ドキドキするのに心地よくて、いつまでもこうしていたいと思う。
それでもちゃんと話してくれた翔さんに私も気持ちを伝えたくて、微睡みそうになる意識をなんとか起こして気持ちを整理しながら話し始めた。
「紅林さんが翔さんを親しげに呼ぶのを見て、あんなに綺麗で仕事が出来る完璧な人が翔さんの近くにずっといたんだって思ったら、苦しかった」
「うん」
「翔さんの気持ちが伝わってなかったわけじゃなくて、それがただの私の自惚れなんじゃないかって、自信が持てなかった。ずっと変に妬まれたりするのなんて慣れてて、それでも傷つかないわけじゃなかったけど、あの給湯室での一件以降、彼女たちの悪口が本当に気にならなくなったんです」
あの日を境に気にしないと言った私の真意がわからないと、少し首を傾げる翔さん。
「庇ってくれた紅林さんを見て、本当に敵わないって思ったんです。翔さんの隣にいるためには、この人みたいに素敵な人にならなきゃって」
「あすか」



