翔さんの眉間にグッと皺が寄る。

「なんで嘘なんだよ」
「だって、だって紅林さん!」
「さっきから何で紅林さんが出てくんの? 関係ないだろ」
「電話で告白してた! 好きだよって! 不倫なんかさせない、泣かせないって……」

先程聞いた翔さんの紅林さんへの言葉を思い出し、自分で言いながら胸が潰れそうに痛い。

つい数十分前には彼女に電話で愛を囁いたばかりなのに、なぜ私にこんなことを。

もう翔さんが何を考えているのか全くわからない。

「は? あ、あぁ。お前、電話聞いてたのか」

一瞬何のことかわからないといった顔をしたあと、バツが悪そうに顔を背けた。

それが酷くショックで、わかっていたことなのに現実に打ちのめされたようにまたぽろぽろと涙が溢れてくる。

泣きすぎたのかしゃっくりまで出だして、まるで子供のようだ。

「ったく。あすか、よく聞いて。全部お前の勘違いだから」

だから泣くな、と優しく涙を拭う指が目尻に触れる。

両手のひらで頬を包むと、もう何も考えられなくなった私にそっと触れるだけのキスを落とした。

「俺が好きなのはあすかだけだ。話聞いてくれるか?」