それなのに私は翔さんのことが好きで仕方なくて、もしかしたら翔さんも同じ気持ちかもしれないってずっとバカみたいに自惚れてて。
いつ貰ったワンピースを着ようかと毎日クローゼットの前で言われたセリフを思い出し真っ赤になりながら悩んでたことも全部。
もう想いは叶わないから優しくてしくれなくていい。必要以上に構ってくれなくていい。
だからやめてほしいと言ってるのに、これ以上の説明をしなくちゃいけないの……?
「っあ、天野さんには、紅林さんが、いるんだし……っ、もういいじゃないですか」
泣きたくないのに、ぽろぽろと溢れる涙は止まらない。
下を向いているせいで頬に流れることはなく直接道路に落ちて染みになるのを幾度も見送る。
声が喉に張り付いたようにうまく出てこなくて、何度も詰まりながら必死に訴える。
もう許して欲しい。次に仕事で会う時は普通にしていられるように努力する。
だから今はひとりにしてほしい。
「あまの、さ……離して、くださ……」
「翔」
「……っ、だから!」
性懲りもなく名前を訂正してきたのに苛立ち声を荒げてしまった。
何でわかってくれないんだろう。
恋に破れてしまった今、どうして彼女のように親しげに呼ぶことが出来ると思うんだろうか。



