結局、凜さんも私も席に着きカレーを食べることになった。

雰囲気からすると、凜さんと専務はかなり親しい仲。
こうやって食卓を囲めるって事は家族ぐるみの付き合いなんだろう。
目の前の他愛もない会話を聞きながら、そこに入っていけない私。
やっぱりここは、私の居場所ではない。

「ごちそうさまでした」
逃げるように、私は母屋を出た。


その夜、なぜか私は眠られなかった。

凜さんと専務はとってもお似合いで、誰が見ても素敵なカップル。
家柄だって釣り合っているし、いざというときには専務の力になれる人。
いつも守られているだけの私とは違う。

ピコン。
萌さんからのメール。

『健さんが連絡先を教えてって言ってるけれど・・・一応断わっておいたわ。健さんの連絡先を送るから、良かったら連絡してみて』

あまり乗り気でない私を気遣ってくれる萌さんが、ありがたい。
でも、メールくらいならいいか。

私は岡野副社長にメールを打った。
メールとは言っても、昨日のお礼。
次を期待する気はない。
むしろ、専務から逃げ出す口実を作っているのかもしれない。
これ以上気持ちが入り込んでしまったら、抜け出せなくなりそうだから。