お屋敷を出て坂を下り、角を曲がったところで専務が待っていた。

「お待たせしました」
「そんなに待ってない」

ああそうですか。

私が乗り込むと車は走り出した。

この車に乗るのは2度目。
この前は飲み会の後で酔っ払っていたし暗くてよく見えなかったけれど、高そうな車。
これだけお金持ちで見た目がよければ寄ってくる女性も多いはず。

「専務は彼女とかいないんですか?」
一番気になることを聞いてみた。

「頭は悪くないのに、学習能力なさ過ぎ」

はああ?
思わず睨んでしまう。

「条件7」

条件7?
えっと・・・あっ、

「気づいてくれたかな?栞奈」

ああ、そうだった。

「はい。もう一度」

「彼女とか、いないんですか?」
多少端折って、聞き直した。

はあぁ。
運転席から深い溜息。

「今付き合っている人はいないよ。栞奈は?」
諦めたように返事をする専務。

「私も今はいません」

「だよな。彼氏がいたら、居候なんてしないよな」

まあね。

でも、かなり強引に居候を勧めたのは誰?
って言ってやりたかったけれど、やめた。
お世話になっているのは事実だから、素直に感謝しよう。
今日だって、私の買い物に付き合ってくれるんだから。
これではどっちが相手をしているんだか分からない。