その後、報告のために楓さんのもとを尋ねた。


「久しぶりね、栞奈さん」
「はい」

本当に、またここを訪れることになるとは思ってもみなかった。
インクの匂いのする本に囲まれた書斎。
ここからすべてが始まった。
あの時、火事で焼け出された私が、離れに居候する約束なんてしなければ運命は変わっていたのかもしれない。

「今日はどうした?」
楓さんの視線は渉さんに向いている。

「色々とご心配をかけましたが、栞奈と2人で生きていこうと決めました」
渉さんが、深々と頭を下げた。

きっと、彼も色んな決心をしたんだろう。
真っ直ぐに楓さんを見た目力と、潔い態度がそう感じさせた。

「栞奈さんはそれでいいの?」
視線を移してきた楓さんにきかれ、

「はい」
私も迷わずに答えた。

「そう。それなら、私に異論はないわ。これから先苦労もあるかもしれないけれど、栞奈さん渉のことをよろしくお願いしますね」
楓さんに手を取って言われ、

「はい」
ウルッとしてしまった。