「俺が誘ったんだ」
静かに降りてきた健さん。

「健さんは悪くありません。私が自分の意志で来たんです」

必死に説明するけれど、渉さんは怖い顔のまま。

ツカツカと健さんに近づくと、
「お前っ」
凄みながさらに距離を詰める。

それでも、健さんは動かない。

「お願い、やめて」
あまりにも険悪な空気に、私は止めに入った。

「栞奈は黙っていろ」
渉さんの声が大きくなる。

「栞奈ちゃん、大丈夫だから」
余裕綽々の健さんの態度が、さらに渉さんを苛立たせるようで、

「ふざけるな」
襟元つかみ、健さんを締め上げた。

「健、お前どこまで最低な奴なんだ」
「渉に言われる覚えはない」

「お前の毒牙に、栞奈を差し出す気はないからな」
「それは栞奈ちゃんが決めることだろう」

「お前がどんなつもりで近づいたか、栞奈は知っているのか?」
「それはお前も一緒だろう」

しばらくの間2人の言い合いは続いた。
私は、渉さんと健さんの言葉の意味を考えていた。



「栞奈ちゃん、今日は帰るけれど近いうちにまた食事をしよう。その時にきちんと説明するから」

渉さんの腕を払い、いつものように声をかけると、健さんは帰って行った。