「栞奈、大丈夫か?」

ウンウン。
頷きながら、渉さんに体を預けた。

頭では分かっている。
もう犯人はここにいない。
ここは安全。
でも、体が動かない。

私って、こんなに弱い人間ではないはずなのに、震えが止らない。

奥様も駆けつけて、警察が来て、みんなが離れに出入りする。
それでも、私は怖くて入れない。

「なくなった物がないか、確認いただけますか?」

警察官に言われ、私は渉さんの手を握った。

「一緒に入ろうか?それとも後にしてもらう?」

「一緒に来てもらえますか?」

「うん」

渉さんに抱えられて、離れへと入った。

冷蔵庫は開けっ放しで、中身が散乱。
タンスから洋服や下着も出されて、部屋にまかれている。

あれ?

指輪も時計も、通帳も残っている。
まあ、金目の物が欲しければここには来ないか。

じゃあなぜ?
もしかして、恨み?
まさか、そんなはずは・・・

「どうですか?なくなっている物がありますか?」

年配の警官に声をかけられ、

「ないと思います」
「そうですか」

「もう、彼女を連れて行ってもいいですか?」

私の様子を察して、渉さんが聞いてくれた。

「はい。どこにおられるかだけ分かるようにしておいてください」

「母屋に連れて行きます。何かあれば僕に連絡をください」

渉さんは、私を抱いたまま母屋に歩き出した。