「栞奈さん、おはよう」
「おはようございます」

いつものように、朝食は母屋で。

これだけ頻繁に渉さんが離れに出入りしているんだから、希未ちゃんだって奥様だって気がついているとは思う。
でも、何も言われない。

「ほら、時間」
まるで本当の母さんのように声がかかる。

「行ってきまーす」

いつも時間ギリギリにかけ出す私。

「また携帯を忘れてるっ」
「ああ、すみません」

置き忘れていた携帯をカバンに放り込み、

「今度こそ、行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」

トホホって顔をした奥様に送り出された。