顔を上げながら話すと公園の時計が目に入る。
針がさしている時間を見てはっとする。
もう下田さんが戻ってきてもおかしくない時間だ。


そうだ、下田さんが来る前に宮くんにはここから立ち去って欲しかったんだ。
勘違いされたら宮くんに害が及びかねない。


「潤様、お待たせして申し訳ございませんでした。」


背後から話しかけられる。
間に合わなかった…。


顔を取り繕って振り返る。


綺麗にたたまれたカーディガンをもった下田さんが立っていた。


「わざわざありがとうございました。」


カーディガンを受け取りながら礼を言う。


下田さんはすでに宮くんに目をつけている。
宮くんを一瞥したときの目はまるで何かを探るよう。
長年一緒にいるから私には分かるけれど、他の人だったらこの目線には気がつかない。