悔しくて唇を強く噛む。
約束を守っていないのは悪魔の方なのに、まともに言い返すこともできない。


籍を入れる、とはっきりと言われたのは初めてだ。
私は相手のことなんてほとんど知らないに等しいし、相手は私に興味すらないだろう。


「そもそもお前が条件をクリアしていればこんなことにもならなかっただろ。」


とどめを刺す言葉まで淡々と言ってのけた。


悪魔が私に提示した条件を達成できなかったのは事実だ。
条件を達成できなかったら、悪魔の言う通りの道を進むことを約束してしまったことも、また事実。


私の反応なんてお構いなしに秘書を連れて次の仕事に向かっていく悪魔の後ろ姿を、ただ見つめているしかできなかった。