「宮くん」


「いらっしゃい、ミズキさん。」


落ち着いた柔らかな笑顔を見せてくれる宮くん。
年齢もさほど私とは変わらなく見えるが、店主らしい。


「こんなところでサボっていてもいいんですか?」


「天気が悪くて来てくれる人は少ないから。」


改めて店内を見まわし、外を見る。
中には人は何人かしかいないし、外はひどい雨だ。


「確かに。」


「でしょ。僕にとっては懐かしくもあるんだけどね、ここまでどしゃ降りだと。」


ミヤくんにつられてもう一度外を見る。
やむことをしらない雨。


私が来たときは、こんなに降ってなかったのに。


この雨で思い出すこと。
それは私たちが初めて会話をした日のことだ。
そして宮くんには忘れてほしい思い出でもある。