「ちょっと、朝比奈。どうして助けてくれなかったの？」
可愛い。 どうしてそんな可愛い顔をして、可愛い事を言うんだ。 好きだって言いたい。彼氏にしてよって言えたらどれだけ楽になるか。
「朝比奈が止めに入ってくれたら、大河さんと一緒に帰らなくって済んだのに…」
隣に座る卓がニヤリと笑う。 少しだけ唇を尖らせて、拗ねた素振りを見せる。
なあ、俺が止めてたら美麻はあいつと一緒に帰らなかったの？
けれど、口から飛び出してきた言葉は心とは裏腹なものだった。
「はぁ？知るかよ。お前が結城さんとどーなろうと俺の知ったこっちゃねぇし。
大体結城さん女の趣味どうかしてんじゃねぇの？ あんな高スペックな男に好かれるとか美麻の人生でこの先一生ない幸福だろうがよ」
卓が頭を抱えて深いため息をつく。 目の前に居る美麻は真っ赤になって缶ビールをぐいっと飲み込んだ。
天邪鬼で、素直じゃない。 分かっている。分かっていても口から飛び出す言葉は止まる事を知らなかった。
「お前みたいなブスを口説くとか、どうかしているとしか思えない。あいつ目が悪いんじゃないのか？」
