「まだ21時半だ。 絶対ヤッてねぇよな?ヤッたとしたら帰って来るの早すぎだよな?なあ、俺安心していいんだよな?!」
「んなの、知るかよ。 本人に訊け。 全くお前は……」
頭が痛い。美麻の事ばかり考えている。
そんな事も露知らず、呑気に部屋着に着替えた美麻が俺の家へやって来た。
けれど、いつものように決してメイクは取らない。それが俺を安心させる。
美麻は素顔を他人には晒さない。 俺だけ特別。俺だけに見せてくれる頬の赤いあざは、俺にとって愛しい部分の一つでもあるのだ。
「おじゃま。卓、久しぶりだね~。」
「久しぶり。今日は夏樹に誘われて。 それより美麻超高級車で送ってもらってたじゃん?何?男?」
「そんなんじゃないよ」
さらりと流して、美麻はテーブルに置いてあった料理をつまみ食いした。
卓は勝手に冷蔵庫の中からビールを取り出して美麻に渡し、俺を肘で小突いた。
顔を上げた美麻と目が合う。 くう…、やっぱり可愛い。メイクをしている顔も可愛いけれど、スッピンだって可愛いのは知っている。
こんなに顔の可愛い女はこの世界にいない。 そんな想いは知らずに美麻は不機嫌そうに俺を見つめると、薄い唇を開いた。



