【完】傷だらけのプロポーズ


「なあ、卓…一体俺のどこが駄目なんだ?」

「いや、駄目とかではなくって…。素直に言えばいいだけじゃん。美麻大好きって…
それだけで解決する話じゃねぇの」

「大好きなんて…言える訳ないじゃないか…。
もう俺本当に駄目なんだよ。 美麻と二人で部屋に一緒にいて、何もしないなんて我慢出来ないし、めっちゃ抱きしめたいし、チューだってしたいのに…
いざあいつを目の前にすると何も出来なくなっちまう…。」

「こじらせてんねぇ…。 つーかベランダで煙草吸わせてもらうわ…」

そう言って、卓はベランダへと出て行った。 特に役立つアドバイスはない。

それも当然。この会話は高校時代から繰り返されているのだ。 その度に卓は、告白すればいいじゃん。と他人事のように言ってくれる。

それが出来たらこんなにこじらせていないし、苦労はしていない。
こんなに好きなのに…全然男として見られていない。

真夜中に一緒にいると、俺の物だと錯覚してしまうのに、何もなかったかのように美麻は自分の家へ帰って行く。

今更、彼女になってくれなんて言っても美麻は本気にしないだろう。 恋人になりたい。恋人じゃなきゃ出来ない事を沢山したい。

ああ、どうして言えないんだ。 いっそ15年も一緒にいたんだ。俺しかいないだろう。もしも冗談で好きだよって言ったらどんな顔をするのだろう。