【完】傷だらけのプロポーズ


「おい、もう21時過ぎなんだが?!
ご飯に行って、今頃ホテルとか行ってる訳じゃねぇよな。
クソッ、何故連絡を返さない。 既読に全然ならねぇ…。一体何やってんだよ…」

卓の言う通り、俺はとても器用な男だ。

世渡りも上手で、苦労をした事はない。 学生時代から人気者だったし、自分でいうのもなんだけど男にも女にも好かれ、モテた。

頭も良かったし、運動も出来て、東日百貨店に営業として就職してからも成績は一気に伸びて、若くして外商まで上り詰めた。

顧客は口を揃えて言う。 「朝比奈くんは信頼できるから」と。 何でも出来てしまうのが、自分でも怖い。 しかしそれと引き換えに美麻にだけはどうしても器用に振舞えない。



俺が彼氏だったら超いいじゃん?

顔だって…そりゃあ、結城副社長みたいに大人っぽくはないけど、童顔で昔からアイドルみたいって言われる位かっこいいし

身長だって高い。 副社長には負けるかもしれないけど、収入だって悪くない。 そして何より性格は一途だ。

どうして…どうして俺じゃあ、駄目なんだ。