知り合い?!
いや、知り合いでも全然おかしくないのだが。

そういえば、朝比奈の顧客の中に結城社長が居た気がする。

朝比奈の仕事は外商だ。 外商員の仕事は得意先である顧客の元へ定期的に訪問し、その人の趣味や趣向に沿った商品を提案する。

そして顧客というのはお金持ちばかりである。 一流企業の重役をはじめ、企業経営者、お医者さん、議員など。

だから結城社長が顧客でもなんらおかしくはない話だ。

朝比奈は明らかな作り笑顔を浮かべた後、私にだけ見えるように恐ろしい視線を落とす。

「えぇ、東日百貨店にいらっしゃるなんて珍しいですね。」

「今日は本店のヘルプを母に頼まれてね。 それよりも、二人もしかして知り合い?」

何も知らない大河さんだけが、ニコニコと私と朝比奈を交互に見やる。

「はい、彼女とは中学からの同級生で」

「へぇ、それはすごい偶然。 実は今彼女を口説いてる所なんだけど、中々落ちてくれなくってね。
美麻ちゃんの事を良く知っている朝比奈くんにアドバイスを頂きたいものだね」

悪びれもなく言った大河さんを前に、朝比奈の笑顔は引きつっていく。
そしていつものようにさらりと私をディスっていく。