【完】傷だらけのプロポーズ


パン屋を出て、近くの公園のベンチに腰をおろす。

確かに今日は良い天気で、日差しがとても気持ち良い。 こんな真冬に外でランチをするなんて想像もしていなかった。

平日の公園には子連れの主婦が数人。 それを見つめながら口いっぱいに含む焼き立てのメロンパンは、温かく甘く美味しかった。

「…おいし」

「でしょう?あのお店のメロンパンは絶品だって言ったでしょう? 百貨店に入ってるパン屋よりずっと美味しいよ。
こんなに美味しいのに100円なんて今時破格の値段だよね」

太陽の光に照らされた、彼の無邪気な笑顔。 子供みたいに口いっぱいにメロンパンを含んで頬が膨れる。

その姿を見て思わずくすりと笑みがこみ上げてくる。

「ふふ。 結城副社長ってイメージと大分違いますね」

「あー、また副社長って言った。 だから大河だって言ってるでしょう?何度言えば分かるの?」

「ですが…副社長を名前でなんて呼べません…」

「でもさー、副社長って呼ばれるとなんか偉そうな感じがするだろう?」

「実際に偉いんですよ。あなたは」