14「傷だらけのプロポーズ」朝比奈SIDE




「う…ひっく、ひっく、うう…卓ぅ…」

「朝から情けねぇ声出すなよぉ…。お前もう大の大人だぞ…?」

「美麻が…美麻が行っちまったんだよ…結城大河の所に…もうきっと戻って来ない…。俺、この先どうやって生きて行ったらいいんだ…?」

「そんなの知らねぇよ…。泣く程好きならハッキリと好きだって言えば良かったのに…。お前は本当に馬鹿だなあ」

「だってよぉ…せめて美麻の前ではかっこいい男でいたくって…
美麻と結城大河の幸せなんて願いたくねぇ!!!…でもそれが美麻の幸せなら俺はその幸せを願わないといけないだろう?」

「あーーーッ、美麻美麻うっさい…!」

「ううう…」

馬鹿みたいにぼろ泣きをしている。
卓の言う通り、俺は馬鹿だ。 幼い頃から美麻を幸せに出来るのは自分だけだと決めていた。

そしてそんな大馬鹿な俺は、美麻が幸せになろうとしているのに往生際悪く、結婚指輪を購入してしまった。 渡せないと知りつつどこにも行き場のない結婚指輪を用意するなんて、どうかしている。