大河さんはシャワーを浴び終わって、温かい珈琲を淹れてくれた。
いつものようにセットもしていない髪は前髪が垂れ下がり、子供のように少しだけ幼くなる。

黒縁眼鏡をして部屋着を着ている彼も新鮮で、見た事のない一面がまた見える。 知らない所を知れば知る程、段々と惹かれていく。

彼は私に素顔を見せてくれるのに、未だに私は偽りの自分を取り繕ったままだった。

だから、このまま彼の思いに応える事は失礼なのだと重々承知していた。

「改めて言うんだけど、美麻ちゃん俺の彼女になって。」

「はい……」

NOという選択肢は用意されていなかった気がする。 少しずつ彼に惹かれていったのは事実だし、結局体の関係を持ってしまっていた。

嘘をついているのに、彼は嬉しそうに顔を綻ばせて私へと優しく触れる。

ズキ、ズキ。胸が痛い。

「マジで嬉しいんだけど、やっと願いが叶った。
あ、ちなみに俺って恋愛と結婚は切り離して考えれないタイプだから、つまりはそういう事だから
だからこそ母さんに紹介したわけだし…」