「うん。俺メイクしてる美麻ちゃんも好きだけど、スッピンの美麻ちゃんの方が好きだ。
すっごく可愛い…」

子供のようにはしゃぐ大河さんを前に、胸がズキズキと痛む。 これがスッピン…? 違う。これはスッピンじゃない。 スッピン風に見せかけたメイクだ。

私の本当のスッピンはもっと醜いの。 けれど大河さんが無邪気な笑顔をこちらに向け続けるから、無理して笑った。

「俺もシャワー浴びちゃおっと。 てゆーか、起きたら隣に美麻ちゃんがいないから焦ったんだ。
もしかしたら逃げられた?!って。でも居てくれて安心した。 俺シャワー浴びるけど、冷蔵庫の中の物好きに飲んだりしちゃっていいからね」

「はい……」

浴室の中に入って行く大河さんの後姿を見送り、そそくさと洗面所から出て行く。
気遣いがあって、優しい人なのは確かだ。 それは昨日の夜ベッドの中でよく分かった。

LILI BULEの副社長という立場もある人間なのに、偉そうな所は一つもなくって親しみやすい。その上で優しいなんて完璧だ。

それに昨日の夜はとても幸せだった。 彼の腕に抱かれて、寒い夜でもとても温かい気持ちになれた。 もしも私にコンプレックスがなかったのならば、何も悩むことなく彼の想いに応える事が出来るのに。