包み込まれている腕をゆっくりと離して、ベッドから静かに起き上がる。
床に散らばった下着を集めながら、大河さんを起こさないように静かに洗面所まで行く。
昨日はシャワーさえも浴びずに抱き合ってしまった。 シャワーを浴びて、スッピンで抱き合う事は勿論出来なかったが、洗面所の鏡に向き合って愕然としてしまう。
やばい…。
メイクは取れかけて、右の頬にうっすらと赤いあざが浮かび上がる。
メイク用品は一式ポーチに忍ばせてある。 …取り合えずシャワーを借りよう。 シャワーを早めに浴びて直ぐにベースメイクだけでも直さなくては…。
昨日は流れでセックスをしてしまった。けれどスッピンを晒す事は出来ない。
勝手に浴室を借りて、シャワーを浴びる。 ポーチの中に入っていたメイク落としで頬を擦ると、ハッキリと醜いあざが浮かび上がってきた。
自ずとため息が漏れる。
どんなに隠しても、絶対に消える事はない。 嫌で嫌でたまらなかった醜いあざの痕。生まれつき私のような病気を持っていて、私よりもくっきりと大きなあざが顔や体にある人がこの世に何人もいる。
堂々とそれを晒している人だっているのに、私には出来ない。 28歳になった現在でも、消える事のない顔のあざと折り合いがつけられずにいた。



