窓ガラスに手を充てると、じんわりと冷たい。都会の夜景とと共にガラスに映る自分。 綺麗にヘアセットをして、可愛らしいドレスとネックレスを身にまとい、ヒールを履いた自分ではないような自分。

その隣には、王子様のような彼の姿をおぼろげに映す。

シンデレラにでもなったつもりなのだろうか。大河さんが用意してくれたヒールは見事に私の足にぴったりだったが、慣れない靴を履いて靴擦れをしてしまっているのに気が付いた。

ぴたりと合っていたように見えて、足に合ってはいなかった靴。 ズキズキと小さな痛みがかかとに走る。 けれどもそれは言わなかった。

「これからどうする?」

「どーしましょーかね」

「うちに来る?」

もう少し浸っていたかった、この余韻に。
シンデレラストーリーのヒロインになれる器ではないと知りながらも。