『えー?そう?まあ、夏樹って誰にでも優しい奴じゃん?』
『だから俺はそういう所がどうかなって思う。 いっつも笑ってて人当りいいけど、何考えてるかわからねーっつか』
『まあ、確かにそういう所あるかも…』
『だろ?結局夏樹って腹の底では俺達の事馬鹿にしてるに違いないって』

あー…めんどくせー…。 こっちがお前らにどれだけ気を遣って生きてきていると思ってるんだ?

ひょうきんな振りをして、誰にでも優しい朝比奈夏樹。 お前らが望む言葉を選びながら、誰の気分も悪くさせないようにいつだってフォローに回って

どうしようか。何でもない顔をして教室の中に入って行こうか。 こっちだって一生ものの友達になるとは思っていない。だからその場だけでも取り繕って皆の前に現れようか。

『なあ、美麻もそう思わない? つか、美麻は特にそう思ってんじゃないの?
夏樹、美麻には特別にあたりが強いからさ』

その輪の中には、美麻も居た。 ああ、それだけは聞きたくはなかった。 耳を閉じたい気持ちにかられたけれど、声を殺して話に聞き入る。