06「こんなに君が好きなのに素直になれない」朝比奈SIDE




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『夏樹って時たまウザくない?』

それは、中学二年の終わりの出来事だった。 男女混合の仲良しのグループで放課後教室によくたむろしていた。

そのグループの中に俺も入っていたけれど、部活で忙しくてその日も陽が沈みかけた教室に一人で向かい、扉の前でぴたりと足を止める。


自慢じゃあないが、男女共に好かれていた。 俺は昔からその場の空気を読むのが上手く、人間関係が円滑に進むようにいつだって注意をはらっていた。

悪口大会の第一声は当時一番仲が良いと思っていた、桐谷(キリタニ)だった。  何となく最近気まずくなっていた原因は、桐谷の好きだといってた三組の女子が俺を好きだという噂が流れてからだ。

超下らない。

突如始まった悪口大会に、その場に居た皆もそれとなく同調し始めた。集団心理つー奴だとは思う。

…言いたい事があるのならば、はっきり目の前で言ってくれればいいのに。 静まり返った廊下内で、扉にぴたりと耳をつけて中から聴こえてくる不平不満を一心に受け止めようとした。