ハロウィンの奇蹟

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 しばらく3人(といっても第三者からすれば2人)で歩き、目的地である3丁目の角に辿り着く。

 その頃には空の色はオレンジに変わっていて東の空から薄紫の夜が滲み始めていた。


 3丁目の角に着いて私はああなるほど、と納得した。

 確かに記憶に残らない風景だ。


 周りのお店はシャッターが下りていて人気が感じられない。

 立ち寄る店がない通りだから私の記憶にも留まらなかったんだと思う。


 そしてお爺さんの言っていた『リコリス』という喫茶店は看板を残しているものの閉まっていた。


 汚れで曇ったガラス張りのドアは長い間、雨ざらし日ざらしになっていたのだろう。

 内側に掛けられた『CLOSE』の木製看板は色褪せておりそれだけで時間の経過を否応にも感じさせた。